事実
看護師として働く中で、これは真実に近い事実だろうなと思うこと。
人は、誰かに、何かを、'やらされている'と思ったときまたはそう感じたときに情熱を失う。
誰かが言った。
「好きなことを仕事にするとつらい。」と。
それはちがうと思う。
好きなことは楽しい。面白い。興味がある。
本来、勉強するということ、'学ぶ'という行為は楽しいことなんだ。
好きなことを仕事にするとつらいのは、その好きなことや楽しいことに制限がかかるからだ。
時間を縛られ、使いたいものを使えず、会いたい人には会えず、本当に伝えたいことを伝えられなくなる。
それが仕事だ。
自分の好きな事柄を、人は、趣味とも言う。
趣味と仕事の決定的な違いは、自由だと思う。
趣味は自由だ。
仕事は不自由だ。
必ず何かを制限される。
時間、お金、人、物、思考。
自由がいいとずっと思っていた。
制限されることがきらいだった。
でも、自由だと身動きが取れなかった。
どうしていいかわからなかった。
不自由の中でしか自由があり得ないということを知った。
不自由の中で、新しいなにかを見つけ出すことができた。
自由の中では、きっと、見つけられなかった。
これからも、きっと、そうだ。
人は、社会という制限の中で生きていくしかない。というか、そこでしか生きていけない。
道徳、理性、秩序。
当たり前にそこらへんに転がっているもの。
背徳、本能、混乱。
わたしたちにとって身近なもの。
自分の仕事を楽しいとはっきり言える人がきらいだ。羨ましい。わたしにとっていまの仕事はつらかったから。
仕事がつらいと素直に言える人が好きだ。その気持ちが痛いほどよく解ったから。
悩み苦しむ人の苦悩する姿が好きだ。
だれにも悩みを打ち明けられない人の過去が好きだ。
熱心に取り組む人の真摯さが好きだ。
たまにさぼってしまうだらしのない人の怠慢さが好きだ。
きらいだとはっきり言える人の素直さが好きだ。
好きだと素直に言えない人の愚かさが好きだ。
ほんの些細なことで心が折れてしまう人の弱さが好きだ。
人からなにを言われても信念を貫く人の強さが好きだ。
働く中で多くの人をきらいになり、そして、好きになった。
人に動かされることがきらいなのに、自分がなにかを動かされるきっかけになったのは、いつも、人だった。
いまも、むかしも、人を動かすのは人だ。
皮肉だと思う。
悔しいけど、これからもそうであってほしいとも思う。
それが真実に近い事実。